プロダクトアウトは、企業の技術や思想を軸にした商品を市場に出すアプローチ/フレームワークです。
プロダクトアウト的発想から生まれたものとしてiPhoneやモデルナの新型コロナウイルスワクチンなどがあり、このアプローチ/フレームワークは大ヒット商品や独占的な市場を生む可能性がありますが、ユーザーのニーズに合わないリスクもあります。
本記事では、このプロダクトアウトの定義やマーケットインとの違い、成功事例について紹介します。
プロダクトアウトとは
プロダクトアウトの概要
プロダクトアウトは、企業の技術や思想を軸にした商品を市場に出すアプローチ/フレームワークです。
技術や知財などの企業の持つ強みをベースにして商品やサービスを開発することから、差別化された商品が生まれやすいと言われています。
一方で、開発した商品やサービスが、ユーザーのニーズに合わない可能性もあるのが特徴です。
プロダクトアウトとマーケットインの違い
プロダクトアウトとマーケットインは、どちらもプロダクト開発のアプローチ/フレームワークである一方で、その視点において大きく異なります。
理解しておくことで、それぞれの特徴や適用場面を把握できます。
プロダクトアウトでは、自社の強みを重視してプロダクトを設計・開発します。保有する技術や知財、リソースをベースにプロダクトを開発することを最優先に考えます。
一方、マーケットインでは、市場や顧客の需要を把握し、それに合わせてプロダクトを設計・開発します。
顧客や市場に求められている価値や特長を反映したプロダクトを提供します。
プロダクトアウトとマーケットインは、どちらも重要なアプローチです。プロダクト開発の目的や状況に応じて、適切な手法を選択することが成功の鍵となります。
両者の違いを理解し、フレキシブルに活用することで、競争力のあるプロダクトを生み出すことができるでしょう。
プロダクトアウトのやり方
ステップ1. ビジョンの明確にする
プロダクトアウトを実施する最初のステップは、ビジョンの明確化です。
どのようなプロダクトを作りたいかを明確にすることが重要です。
ビジョンを明確にすることで、開発チーム全体が共通の目標を持ち、一体感を持って取り組むことができます。
ステップ2. 自社の強みを整理する
次にするのは、自社の強みを整理することです。
自社が持つ技術やリソース、専門知識などの強みを明確にしましょう。それに加えて、自社のビジョンやミッションも考慮に入れます。これにより、プロダクト開発の方向性や目標が明確になります。
ステップ3. アーリーアダプターを見つける
続いて、アーリーアダプターを見つけましょう。
アーリーアダプターとは、新しいプロダクトやサービスに早くから興味を持ち、積極的に試す顧客のことです。
アーリーアダプターは、新たなプロダクトに関するフィードバックや意見を提供してくれる貴重な存在です。
彼らのニーズや要求を把握することで、プロダクトの改善や進化につなげることができます。
ステップ4. MVP(Minimum Viable Product)を作り、価値の検証を行う
MVP(Minimum Viable Product)を作成し、価値の検証を行います。
MVPとは、最小限の機能や特徴を持つプロダクトのことです。
顧客の反応やフィードバックを収集し、プロダクトの有効性や市場適合性を確認します。
この段階では、リリース前のプロダクトを早期に顧客に提供し、実際の使用や評価を通じて改善点や課題を把握します。
ステップ5: リリースとフィードバックの収集
最後のステップでは、プロダクトを実際の市場にリリースし、ユーザーからのフィードバックを積極的に収集します。
ユーザーの声や市場の動向を把握し、プロダクトの改善や拡張を行います。
継続的なフィードバックの収集と改善を行うことで、より使いやすいプロダクトを提供することができます。
以上がプロダクトアウトのやり方の基本的な手順です。
自社の強みを活かし、アーリーアダプターのフィードバックを取り入れながら、MVPを通じてプロダクトの価値を検証していきます。
この過程を繰り返すことで、顧客のニーズに即したプロダクトを開発することができます。
プロダクトアウトの成功事例
iPhone
iPhoneは、誰もイメージできなかった携帯電話の新しい形を、実現した画期的なプロダクトです。
スティーブ・ジョブスの有名な発言にもあるように、「お客様に何が欲しいか聞いて、それを提供することはできない」という考え方が、iPhoneの開発にも反映されました。
スティーブ・ジョブスは以下のように述べています。
- 「顧客に何が欲しいか尋ねて、それを提供しようとすることはできない。」
(原文:You can’t just ask customers what they want and then try to give that to them.) - 「多くの場合、人々は自分たちが何を望んでいるのかわからない。それを見せてあげるまで。」
(原文:A lot of times, people don’t know what they want until you show it to them.)
これは、プロダクトアウトのアプローチを象徴しています。
顧客の要望を受けて開発するのではなく、革新的なアイデアや概念を提示し、顧客がそれに共感することで新たな需要を生み出すのです。
iPhoneの成功には、スティーブ・ジョブスの発想力と、それを妥協なく実現したApple社の技術力が不可欠でした。
iPhoneは、従来の携帯電話とは異なるタッチパネルを採用し、指による接触だけで複雑な操作を可能にしました。
これは当時としては画期的なアイデアであり、ユーザー体験の革新をもたらしました。
iPhoneの成功は、プロダクトアウトの手法によるものです。
革新的なプロダクトを開発する姿勢が、多くの人々に衝撃を与え、新たな市場を形成しました。
その結果、iPhoneは世界中で愛される存在となり、スマートフォンの歴史を作り上げました。
モデルナの新型コロナウイルスワクチン
モデルナの新型コロナウイルスワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)を活用することから生まれたワクチンです。
このワクチンの開発は、「もしmRNAを治療の基盤にすることができたら?」という発想から生まれました。
モデルナは、mRNAの応用範囲を広げる可能性についても研究を行っており、iPS細胞にmRNAを適用することも検討されました。
モデルナのワクチンは、多様な用途の可能性を秘めていると考えられています。
新型コロナウイルスワクチンはその一例であり、モデルナでの検討がこの成果につながりました。
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大を抑える上で重要な役割を果たしたことはみなさんのご認識の通りです。
モデルナの新型コロナウイルスワクチンは、プロダクトアウトの手法によって生み出された成功事例の一つです。
先進的な発想と科学的な研究に基づき、mRNAの応用範囲を広げることで、新たな治療法や予防手段の開発に成功したのです。
まとめ
プロダクトアウトは、顧客や市場のニーズを重視したプロダクト開発手法です。
マーケットインとは異なり、自社の強みを中心に据えてプロダクトを設計・開発します。
ビジョンの明確化やユーザーのニーズの理解、MVPの作成と検証、フィードバックの収集など、具体的な実施方法や成功事例を紹介しました。