ビジネスにおいて意思決定を行う際、正確な情報や完全なデータに基づくことは稀です。
しかし、不確実な状況でも合理的な判断を下すためには、フェルミ推定という手法が役立ちます。
本記事では、フェルミ推定の概要、やり方、具体的な例題などを解説します。
フェルミ推定とは
フェルミ推定の概要
フェルミ推定とは、物事を合理的に推定するための手法であり、主に不確実性の高い問題に対して使用されます。
フェルミ推定では、問題を小さな要素に分解し、それぞれの要素に対して仮定や推定を行い、それを組み合わせて全体の推定結果を導きます。
そのため、正確な数値データがなくても、おおよその答えを得ることができます。
フェルミ推定の歴史
フェルミ推定は、物理学者エンリコ・フェルミによって開発されました。
第二次世界大戦中のマンハッタン計画において、フェルミは核反応の予測においてフェルミ推定を駆使しました。
その後、ビジネスや経済の領域でもフェルミ推定が応用されるようになりました。
フェルミ推定のやり方
フェルミ推定を行うには、以下のステップを順に実施します。
ステップ1: 問題の構造化と要素分解
まず、解決すべき問題を細分化し、問題の要素を特定します。
問題を小さな部分に分割することで、推定の対象となる要素を明確にします。
ステップ2: 各要素に関する仮定の設定
各要素に関して、合理的な仮定を設定します。
仮定は現実的と考えられる範囲で設定し、問題の要素を適切に把握するための基準となります。
ステップ3: 数値の推定と計算
設定した仮定に基づいて、各要素の数値を推定します。
これは正確な数値ではなく、おおよその値を求めることを目的としています。
ステップ4: 結果の検証と修正
推定結果について、妥当な水準か、現実的な水準かを検証します。
必要に応じて仮定や推定を修正します。
以上がフェルミ推定の基本的な手順です。
これらのステップを順に進めることで、不確実な情報やデータに基づいて合理的な推定結果を導き出すことができます。
フェルミ推計に活用しやすい情報
フェルミ推計を行う上で活用しやすい情報は以下の通りです。
経験則や過去のデータ
同様の問題や状況に直面した際の経験則や、過去のデータを参考にすることができます。
これにより、現実に即した推定値を得ることができます。
業界の平均やベンチマークデータ
自社の業界や競合他社の平均値やベンチマークデータを利用することで、推定に役立つ情報を得ることができます。
例えば、市場調査費用や広告費用に関しては、同業他社の経験や業界平均のデータを参考にすることができます。
専門家の意見や専門的な情報源
テーマに関連する専門家や業界の専門的な情報源からデータを得ることができます。
専門家の意見や専門的な情報は、推定において便利な情報源の一つです。
統計情報や市場調査
インターネットで調べて見つけることができる、様々なデータや統計情報、市場調査結果は活用しやすい情報です。
(コンサルのケース面接では使えないという弱点はありますが…)
フェルミ推定の具体的な例題:日本におけるAmazon利用者数
日本におけるAmazonの利用者数を推定するためのフェルミ推定の例題を解説します。
以下に仮定の数字を置きながら、具体的な推定方法を説明します。
「日本におけるAmazon利用者」の構造化と要素分解
日本におけるAmazon利用者数を以下のように分解します。
日本におけるAmazon利用者数=日本の人口 × インターネット利用率 × オンラインショッピング率 × Amazon利用率
各要素に関する仮定
まずは、推定に必要ないくつかの仮定を設定します。
日本の人口
日本の人口は、1億3,000万人と仮定します。
インターネット利用率
インターネットはかなり普及しているという前提のもと、日本のインターネット利用率は、約90%と仮定します。
オンラインショッピング利用率
インターネットを利用してオンラインショッピングを行う人の割合は、約80%と仮定します。
ニッパチ、などと呼ばれるので、まぁ80%くらいかなという程度の感覚で仮置きします。
Amazon利用率
オンラインショッピングを行う人のうち、Amazonを利用する人の割合は、約50%と仮定します。
オンラインショッピングを利用してる人の、半分くらいは使っていそうじゃない?という感覚で仮置きします。
数値の推定
上記の構造、仮定に基づいて計算すると、4,680万人くらいがAmazonを使っているのでは、と推定することができます。
- 日本におけるAmazon利用者数
=日本の人口(1億3,000万人) × インターネット利用率(90%) × オンラインショッピング率(80%) × Amazon利用率(50%)
=4,680万人
※軽くググってみると、4,700万人やら5,000万人やらという調査結果が出てくるので、規模感は大体あっているように感じました。
フェルミ推定のメリットと注意点
メリット
フェルミ推定のメリットは以下の通りです。
- 迅速な判断: 不確実な状況でも迅速に合理的な判断を下すことができます。
- 柔軟性: 数値データがなくても、おおよその結果を得ることができます。
- 問題解決力: 大きな問題を小さな要素に分解して考えることで、問題解決の能力が高まります。
注意点
フェルミ推定を行う際には以下の点に注意が必要です。
- 仮定の適切性: 仮定は現実に即しており、問題の要素を適切に分解する必要があります。
- 結果の評価: 推定結果の妥当性や信頼性を確認するために、結果の評価を適切に行う必要があります。
フェルミ推定のビジネス応用
意思決定への活用
ビジネスにおいて意思決定をする際には、フェルミ推定が有用です。
不確実な状況下でも、合理的な判断を下すための手法として活用できます。
プロジェクトの見積もり
プロジェクトの見積もりやリソースの配分にもフェルミ推定は役立ちます。
要素ごとに推定を行い、全体のスケジュールや予算を見積もることができます。
リスク評価と管理
リスクの評価や管理にもフェルミ推定が有効です。
不確実な要素に対して、仮定や推定を行い、リスクの発生確率や影響度を予測することができます。
まとめ
フェルミ推定は、ビジネスにおける不確実な状況下での意思決定や問題解決に役立つ手法です。
問題の要素を分解し、適切な仮定や推定を行うことで、合理的な結果を得ることができます。
ビジネスの様々な場面でフェルミ推定を活用して頂けると嬉しいです。